・徳島市立動物園

JR徳島駅にほど近い場所にあるはずの動物園。 それは住宅街の中にいきなり現われました。そして、戸惑う我々を迎えていたのは、 あまりに素朴でゆるい絵の案内板でした。その地図は、どうやら動物がいるらしいという ことが確認できるだけで動物園の構造はまるでわかりません。 我々は、期待と不安を胸に抱きつつ入場することにしたのでした。



園内では、様々な動物が我々を待っているようでした。 やる気のないライオン、痩せこけたアザラシ、ひからびたペンギンなど我々が 今まで見て知っている動物とは一味違う風情があふれていました。 その中でも、心を強く打たれたのは、 タイから寄贈されたというゾウです。このゾウは、決して歩き回ったり、こちらを向いたり してはくれません。なぜなら、その足が鎖でがっちりと地面に繋がれているからです。 動きたくても、自由に動くこともできず、半ばあきらめているかのような動きを見せるゾウたち。 遠くにあるエサまで必死に鼻を伸ばして取ろうとしている姿には涙があふれてきます。



しかし、そうこうしているうちに動物園の敷地は終わってしまいました。 そして、そこから先はこの動物園のもう一つの姿、「子供の国」が待っていたのです。 そこは、小さな観覧車や小さな電車、バッテリーカーや木馬など、娯楽に興じることのできる ミニ遊園地だったのです。入場無料ということもあってか、この日も多くの親子が、隣の 動物たちの前で歓声をあげていました。



そしていつしか、我々もその娯楽の園に足を踏み入れてしまったのです。 またしても、ゆるい絵のミッキーやドナルドの観覧車が、我々を迎えてくれました。



いよいよ我々は、バッテリーカーが並べて置かれている奥にゲームコーナーを発見することが できました。しかし、喜びも束の間、ここには我々が求めている古いゲームはなかったのです。 ここへきて我々は大きく落胆しようとしていました。しかし、そんなはずはない。 この場所にはきっと何かある。心のどこかでそう願わずにはいられませんでした。



そんな我々の前に、もう1つの、そしてこの動物園の最終兵器とも言えるゲームコーナーが 姿を現わしたのです。そのゲームコーナーは今にも崩れそうな建物に、軽食コーナーとともに 目立たない形で営業をしていました。我々が求めていた、時間の止まったゲームコーナーは やはり存在していたのです。



そのゲームコーナーの中は、まったくの混沌といっていい状態で、ビデオゲーム、エレメカを 問わず、ダンボール箱や、万国旗がすきまに置かれ、 もはや人が通ることすら困難になっていました。 我々は、ビデオゲーム初期のものから、非常にレアな景品ゲームまでたっぷりと味わい 満足をしていました。そして、その一角にある両替所にいた高齢のおばあちゃんに話を聞いて みることにしたのです。 両替所のおばあちゃんは、耳が遠く目も悪い様子でしたが、 やがてこのゲームコーナーのことについて語り始めました。



そのおばあちゃんは、もうかれこれ30年以上もこの場所で、 ゲームコーナーの係員として生活をしていたのです。そのあまりに緩やかなタイムスケールに 我々は大きな衝撃を受けました。 「昔ここでゲームを遊んでいた子供が、 大きくなって結婚し、子供を連れてまたやって来ている」といった話を聞くと、 胸に熱いものを感じずにはいられません。
そうして我々は、この地を後にしました。ゲームコーナー裏の空き地では、 使わなくなったゲーム機が雨ざらしになって置かれていましたが、それさえもゆっくりとした時の 流れの中で生き続けているかのように感じられるのでした。



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